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グローバル化は足元からやってくる ~国際学で切り取る世界と社会~

2012年5月16日 03:29

領土問題をきっかけに人口問題を考える(7):3つの選択

過去6回に渡って日本の人口問題について言及してきました。

最後に、もう一度、「領土」「国民」「主権」の基本から考えてみましょう。「領土」は国家にとって、とても重要です。しかし、それはそこに住む「国民=人」がいてこそ意味があるのです。

仮に、「領土」と「国民=人口」が同じくらい重要であるとすれば、両方を反対にしてみて下さい。100年後に人口が半分以下になるという推計が、いかに国家的危機であるかが容易に想像できるのではないでしょうか。

そして、今日、私たちが採り得る3つの選択を考えてきました。

①現状維持という選択
(少子化対策は成果を上げず、出生率は今の低い状態が続く)
【予想される状況】
●2100年には日本の総人口が5,000万人を下回る
●65歳以上が日本の総人口の半数近くになり、世界最高レベルの高齢化国家へ
●労働力不足によって生産性が著しく落ちる (経済に悪影響)
●市場の縮小によって企業の海外流出
●医療も含め社会保障制度の見直し
●年金の支給開始年齢の引き上げ
●グローバル化した一部の富裕層と大半の国民との経済格差拡大(反グローバリゼーション政党の台頭も?)

②外国人労働者の受け入れによって労働力不足を解消するという選択
【予想される状況】
●経済規模の維持
●短期的には1,000万〜2,000万人の移民の受け入れ、
●将来的には5,000万人近くの移民の受け入れ(現在の少子化が続き、経済規模を維持するならば)
●2100年において日系日本人は過半数以下へ(多民族国家へ)
●多言語主義になり、国内でも外国語が必要になる
●大量の移民の受け入れによって最低賃金が下がる
●貧富の差が拡大すれば貧困層の日系日本人と外国人労働者(移民系日本人)の「民族」間衝突の危険性が高まる(極右、極左政党の台頭も?)

③男女観の転換、男女の職場、家事育児のシェアという選択
【予想される状況】
●10~20年後には少子化が止まり、人口の減少が緩やかになる
●経済規模の縮小も限定的に留まる
●労働力不足も緩やかなになる
●外国人労働者を受け入れるにしても②のような大量ではなくなる
        
このように見ていきますと、やはり③の選択がベストのように思われます。

しかし、以前、当ブログにて「男女格差(ジェンダーギャップ)の読み方(1):世界98位の意味」(2011年11日19日)というタイトルで記しました通り、日本は先進国の中で男女平等ランクにおいて最低レベルであり、③の選択もかなりの困難が伴います。実のところ、日本が最も国際的に弱い分野なのです(弱いからこそ、少子化なのですが)。

更に③の選択は時間がかかりますので、現実的には多かれ少なかれ①の状況にも陥り、もし、経済規模を維持したいとすれば、②にあるような国内の国際化も不可避かもしれないのです。

しかし、それでも男女の社会的役割に関する価値観の転換を起こし、抜本的な少子化対策を行なわない限り、①もしくは②の選択がより前面に出てしまうのです。つまり、日本が少しでも経済的な豊かを維持し、少しでも若々しい国家であり続けるために、日本人はできるだけ早期に変わらなくてはならないのです。

【私は、フェミニストが声高に叫ぶような「日本は女性差別をしている遅れた国」であるとは思っていません。2011年11月20日2011年11月23日にも書きました通り、むしろ、80年代まで、女性の「シャドーワーク」を見事に社会的に機能させた他にあまり例のない先進国であったと考えています。しかし、90年代以降、この日本型のジェンダーシステムがもはや有効ではなく、少子化、高齢化という国家的危機を招いてしまっているのです。】

領土の問題の再提起、大いに結構です。しかし、上記の現状を考えれば、同等もしくはそれ以上の熱意を持って、少子化対策にも取り組まないならばバランスを欠くのではないでしょうか(今回は論じませんでしたが、国民の命を守るという観点から、毎年、3万人以上の命を奪っている自殺問題も看過できません)。

結局、愛国的な行為とは、地道により「良い国」を造ることであるように思えます。男女共に生き甲斐、働き甲斐があり、住み易く、より子育てをしたくなるような未来に希望のある国を築くことが求められるでしょう。そして、それは隣国を刺激することも無く、世界平和に合致しながら、国を強くすることでもあるのです。

2012年5月13日 21:58

領土問題をきっかけに人口問題を考える(6):男女観の転換

少子化問題は、政治家や官僚だけが旗振り役をしても改善されないと考えます(もちろん、イニシアティヴは必要であり、彼らの責務は大きいのですが)。国民の抜本的な意識改革が必要です。

少子化対策として第一に、女性の社会進出の促進が挙げられています。

平成17年の『厚生労働白書』では「女性の社会進出が少子化をもたらした要因とされることがあるが、近年では、国際的に比較すると、北欧諸国のように女性の就労が進んだ地域の方が出生率が高い傾向があり、女性の就労と出生率には正の相関がみられるようになっているといわれている」(「第3節少子化を取り巻く地域の状況と取組み」)と明記されいます。

実際、厚生労働省が発表した2000年の調査によれば、日本国内においても都道府県別にみて30歳代前半の女性の労働力率の高い地域が合計特殊出生率も高い傾向にあるのです(同上)。

女性の社会進出に関しましては、何年も前からフェミニズムの文脈において主張されてきましたが、少子化対策においてセットとして重要なことは、男性の家事育児への参加なのです。

この3月発表された厚生労働省の「21世紀成年者縦断調査」では、結婚して子供が生まれた後、夫が休日に家事や育児をする時間が長ければ長いほど、2人目以降の子供が生まれる率が高くなる傾向があることが明らかにされています。

調査は、子供がいる男性に休日の家事・育児の時間を質問しており、「なし」と答えた人で第2子以降の子供が生まれていた割合は【9.9 %】、「2時間未満」では【25.8%】、「2時間以上~4時間未満」で【48.1%】、「4時間以上~6時間未満」で【55.3%】となり、「6時間以上」では【67.4%】まで上昇しています(厚生労働省『第9回21世紀成年者縦断調査』平成24年3月21日、7頁)。

誤解していただきたくないのは、この議論は、企業内で女性重役、女性管理職を何割増やそうとか、女性国会議員を増やそうというような、エリート女性を創出することではないのです。

女性が社会進出して、男性と共に仕事漬けとなっても少子化対策にはならず、また、逆に女性だけが仕事をして、男性が家事育児を100%担当しても子供は増えないでしょう。女性が男性と入れ替われば済むような単純な話ではないのです。

つまり、キャリア、ノンキャリア、職種職業を問わず、女性も家事育児をしながら社会進出し、男性も仕事を続けながら育児家事が選択できる社会環境を作り出すことが重要なのです。よく言われるような、「仕事か子供か」という「二者択一」ではなく、男女が仕事と育児家事を同レベルでシェアすることで、仕事と子育ての両方が(男女共に)無理なく選択できるようにならなくてはなりません。

もちろん、専業主婦や専業主夫を望まれる方もおられるでしょうから、強制は許されません。しかし、少子化がもたらす深刻な状況を考えますと、国家や地方自治体、そして企業が男女の仕事と育児家事のシェアがやり易い環境を早急に整えなければならないとは言えます。

そして、私たちも価値観の転換を図らなければなりません。男だから仕事一筋、女だから家庭を守るというステレオタイプを再考しなければなりません。

もし、日本人が職場や家庭における男女観を変えることができなければ、このまま少子化が続くことになります。しかし、日本の少子化は「待ったなし」の状況にまできているのです。私たちは現状と予期される将来を理解し、生きる道を選択しなければなりません。

2012年5月12日 00:00

領土問題をきっかけに人口問題を考える(5):少子化対策の現状

人口問題を考える際、やはり、早急に少子化対策に全力を尽くすしかないという結論に至ります。しかしながら、日本政府が少子化、高齢化対策を本格的に取り組んでいるようには見えないのです。

2009年9月に民主党が政権を担ってから2年8ヶ月間、少子化担当の大臣は全て他の担当との兼任となっており、更に数ヶ月での交代を続けています。

2009年9月〜2010年5月 福島瑞穂氏
(消費者及び食品安全担当、男女共同参画担当兼任)
2010年6月〜2010年9月 玄葉光一郎氏
(「新しい公共」担当兼任)
2010年9月〜2011年1月 岡崎トミ子氏
(国家公安委員長、消費者及び食品安全担当、男女共同参画担当兼任)
2011年1月〜2011年9月 与謝野馨氏
(経済財政政策担当、男女共同参画担当、社会保障税一体改革担当兼任)
2011年9月〜2012年1月 蓮舫氏
(行政刷新担当、「新しい公共」担当、男女共同参画担当兼任)
2012年1月〜2012年2月 岡田克也氏
(副総理、行政刷新担当、「新しい公共」担当、男女共同参画担当兼任)
2012年2月〜2012年4月 中川正春氏
(防災担当、「新しい公共」担当、男女共同参画担当兼任)
2012年4月〜現職   小宮山洋子氏
(厚生労働大臣兼任)

この期間、日本の合計特殊出生率は2009年度が【1.37】、2010年度が【1.39】となっています(厚生労働省『成22年人口動態統計月報年計(概数)の概況』)。自民党政権下の2005年度が【1.26】、2007年度【1.34】、2008年度が【1.37】ですので、民主党に政権交代して状況が大きく改善されいるとは言えないでしょう。

もちろん、どれ程優秀な政治家であっても僅か数ヶ月間に、他の大臣職も兼任しながら「国のかたち」を左右する少子化問題に結果を出すのは難しいのも事実です。

政府批判ばかりしても、フェアではありません。

尖閣諸島の購入を検討している石原慎太郎氏が知事を務めています東京都の合計特殊出生率は、2005年度【1.0】、2006年度【1.02】、2007年度【1.05】、2008年度【1.09】、2009年度【1.12】であり、2010年度も【1.12】と、近年微増しているとはいえ、いずれも都道府県別で全国最下位であり、日本の平均をかなり下回っているのです(平成18年〜平成22年『東京都人口動態統計年報』)。

東京都の少子化は様々な要因があるでしょうが、その一つに育児環境の悪さを現すものとして待機児童問題が挙げられるでしょう。2010年度の東京都における保育所入所待機児童数は【8,435人】ですが、2005年度【5,221人】、2006年【4,908人】、2007年【4,601人】、2008年【5,479人】、2009年【7,939人】と改善されるどころか悪化しています(東京都福祉保健局「保育所の状況等について」平成22年7月13日)。

約7割が核家族化している今日、これでは働ける状態ではなく、子供を作れば、両親のどちらかが仕事を中断するか辞めることを意味し(多くの場合は女性なのでしょうが)、その後、数年、子育てに専念しなければならなくなります。子作りが、そのような社会的キャリアの終焉の決断と重なってしまう限り、少子化が解消されるのは難しいでしょう。。

もちろん、政治家ばかりの責任にはできません。政治家を選んでいるのは有権者であるという基本に戻り、政治家が少子化対策に本気で取り組まない理由を探せば、私自身も含めて日本国民(有権者)が、この問題を重要視してこなかった結果であるということになるのではないでしょうか。

2012年5月 9日 06:06

領土問題をきっかけに人口問題を考える(4):移民受け入れと日本人のコンセンサス

前回(5月6日)は、外国人労働者の受け入れ案を採り上げました。

将来的に日本が直面する少子化、高齢化によって失われる労働力の補填を移民に頼るとすれば、とりあえず1,000万〜2,000万人の外国人労働者が必要だとされます。もし、移民の「力」を借りるとすれば、単に労働力としてではなく、人間として受け入れる必要があり、日本人も国民的な覚悟が求められます。

多様な人間が集って創る日本の「多民族社会」化のアイディア自体は否定すべきではありませんが、それは、前提として国民的コンセンサスを形成することができるかどうかにかかっているのです。

今回は、移民を受け入れると仮定しまして、具体的にどのような状況が予想されるかを考えてみます。

毎年、数十万、数百万の外国人が来日することになりますが、彼らは当然、日本語が十分ではないでしょう。ですから、彼らの拙い日本語にもイライラしてはいけません。

それどころか、短期間に大量の外国人に来ていただくことになりますので、暫くの間、好むと好まざると日本人も仕事上、コミュニケーションの手段として英語もしくは他の外国語が国内で必要になり得ます。

状況によれば、約3割のメキシコ系移民のためにスペイン語が実質上の「公用語」となっている米国カリフォルニア州のように、日本も多言語主義の採用が避けられないかもしれません。

移民の方々が信じる宗教や異なる文化にも寛容にならなくてはなりません。欧州先進国では、移民の宗教問題が政治化していますので、反面教師として学ばなくてはなりません。

先進国におきまして移民系住民は概して出生率が高い傾向があるとされます。それも分かった上で来ていただくのですから、移民系日本人の人口が日系日本人よりも早い速度で増加するかもしれませんが、それに立腹してはいけません。

日本で生まれた移民2世、3世が欧州諸国のように国籍を取得するようになれば、当然、移民系だからと言って結婚や就職で差別することは許されません。

何よりも、そうなれば日本も欧米先進国並の「多民族国家」となりますので、日本が「ほぼ単一民族」であるというような表現はなくなるでしょう(現在も日本は「単一民族」国家ではありませんが、人口比において圧倒的に日系日本人が多くを占めます。しかし、このまま少子化が進みますと、2100年には人口が5,000万人を下回ることになり、移民によって今の1億2千万人以上の人口規模を維持するすれば、日系日本人は最大多数であったとしても、過半数には届かないのです)。

日本は「民族」的には、日系日本人、アイヌ系日本人、在日の方々、更に新たに来る様々な移民系日本人の方々によって形成される多様性に満ちた国家になるのです。少子化対策よりも外国人労働者の受け入れを優先するならば、このような「国のかたち」の変化を国民が合意し、受容しなければなりません。

実際、これらの事項は、同質性の高い(と考えられている)社会に住んできた多くの日本人にとっては易しいことではないと考えます。

グローバル化によって国内は格差社会となるでしょうから、日系日本人の貧困層と移民系日本人の貧困層が衝突する形の(欧州先進国と同じような、もしくはそれ以上の)「民族」間の衝突が生じる危険性もあります。フランスの「国民戦線」のような「民族主義」、あるいは「ネオナチ」のような「純血主義」を訴える右翼政党が台頭するかもしれません。

【反対に、移民受け入れの労働力以外のプラスの点は、才能ある移民系日本人が登場し、日本の様々な社会空間において刺激を与え得ることです。英国が生んだ20世紀を代表する音楽グループ「ビートルズ」のメンバーの殆どがアイルランド系英国人であり、フランスのサルコジ元大統領がハンガリー系移民2世であり、日産社長のカルロス・ゴーン氏の両親がレバノン系ブラジル人、レバノン系フランス人であるように、政治、経済、芸術、スポーツ、学界などは、移民1世及び2世、3世の存在によって活性化されています。しかし、たとえ、優秀な移民系エリートが登場しても、欧州では「民族」間の対立がそれをもって解消されてはいないのです。元来、グローバル化の中で世界中の国が欲しがる「高度人材」となれば、移民系、日系にかかわらず民族性や国籍に対するアイデンティティが希薄になる(政治家は別として)傾向が生じるでしょう。「ビートルズ」が何系だろうと、ゴーン氏が3カ国の国籍を持っていようと社会的にあまり重要ではないのです。】

経済規模の縮小(貧しくなるの)も避けたく、また、急激に1,000万〜2,000万人規模の移民も受け入れたくもなければどうしたら良いのでしょうか。

結局、国内において少子化対策を早急に進めるしかないことになります。そもそも、日本人が将来を不安に思い、子作りに躊躇したり、待機児童問題など子育てに必要以上に苦労するような国に、外国の方々に来ていただいても、お互いに不幸になるだけなのではないでしょうか。

現実を直視すれば、フランスの成功例を見ても、出生率を2.0まで回復するには最短でも20年近くが必要です(2010年の日本の出生率は1.39)。そのタイムラグを考えると、ドラステックな少子化対策を今直ぐ始めても、外国人労働者を受け入れなければ経済規模の縮小は不可避でしょう。ただ、数十年後、少子化対策に効果が見られれば、市場の縮小を緩和し、仮に移民の受け入れも無理のないスピードとなり、「民族」間の軋轢を(少しは)防ぐことができるのではないでしょうか。

2012年5月 6日 23:59

領土問題をきっかけに人口問題を考える(3):外国人労働者の受け入れ案

前回(5月5日)は日本の少子化の問題点を検証しました。

少子化に伴います人口減少は日本の将来設計の様々な点において悪影響をもたらします。特に少子化と高齢化によって深刻な労働力不足に陥りますと、日本経済は規模の縮小が不可避となります。

そこで、外国人労働者を受け入れ、労働力を補充するという案はどうなのでしょうか。

自民党政権時代から与党の有力議員と日本経済団体連合会(経団連)は、労働力の確保と経済規模の維持を目的に、約1,000万人の外国人労働者の受け入れを検討してきました。

自民党の外国人材交流推進議員連盟(会長・中川秀直元幹事長)、自民党国家戦略本部「日本型移民国家への道プロジェクトチーム」は、2008年6月、外国人労働者受け入れに関するレポートを纏め、「人口減少社会の日本の危機を救うには、海外からの人材受け入れ以外にない」と政府へ進言しています(朝日新聞、2008年5月21日、産経新聞、2008年6月20日)。

単純労働者を含む外国人の定住を前提に、複数省庁にまたがる外国人政策を「移民庁」に統一し、今後50年間で人口の10%(約1,000万人)を移民が占める「多民族社会」を目指すべきだとし、議員連盟会長の中川氏は「人口が減少するなか、移民育成型の社会は、選択の余地がない『21世紀の日本の道』だ」と主張しています(朝日新聞、2008年5月21日)。

このような移民受け入れ政策は、経団連の意向とも重なります。2008年10月に出された経団連の報告書『人口減少に対応した経済社会のあり方』の中では、「本格的な人口減少下において、持続的な経済成長を実現し、また経済社会システムが安定的に機能していくためには、年間で相当の規模の外国人材を積極的に受け入れ、定着を図っていかなければならない」と記されています(日本経済団体連合会「人口減少に対応した経済社会のあり方」、2008年10月14日、19頁)。

2009年9月に民主党政権が樹立されましたが、民主党の中でも、外国人労働者受け入れに関しまして、積極的な議員は少なくないようです。例えば、前原誠司政調会長は、2011年10月31日に外国人労働者の受け入れについて「将来拡大するのかどうかについても国民的な議論で考えていかないといけない。人口も減って経済活動が縮小していく中で本当に借金を返せますかということも考えなければならない」と述べています(産経ニュース、2011年10月31日)。

上記にみられますのは、少子化を前提に、経済的な観点から移民労働者の受け入れが必要であるという認識です。しかし、そこには、少子化対策への積極的な姿勢が十分には見られないように思えます。

また、数字を埋め合わせるという考え方でありますと、少子化が更に悪化すれば、移民の数を増やさなくてはなりません。実際、経済産業省は生産年齢人口のピーク(1995年)を維持するには、単純計算で2030年までに1,800万人もの外国人を受け入れる必要があるとしています(経済産業省『通商白書2005』、263頁)。

【興味深いことに『通商白書2005』では「これほど大量の外国人労働者を受け入れる体制が法的にも社会制度的にもできていないこと、また、外国人労働者に対する国民意識の熟度を勘案すれば、外国人労働者政策において、「労働力人口の維持」という目標をメインターゲットとすることは現実的ではない」と結ばれています(同上、264頁)。】

私は、長年、外国人として諸外国に滞在してきましたので、心情的には日本の「多民族社会」化に賛成したいのです。しかし、その大前提として、労働力を補うことだけを目的として、モノのように人を受け入れ、その結果、欧州各国で発生しているような「民族」間の軋轢、衝突が生じるような状況にはしてはいけないとも考えます。

20世紀の欧州先進国の移民政策の反省は「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」(マックス・フリッシュ)という言葉に集約されます。

日本は欧州の経験を学び、全てを承知した上で1,000万-2,000万人の外国人の方々に、日本に来ていただき、「力」を借りようとするならば、移民労働者を労働力としてではなく人間として受け入れなくてはなりません。そのためには、日本人もそれ相応の覚悟が必要です(もちろん、移民の方々も色々な面で日本を学んで頂くことになるでしょうが)。

もし、異質な外国人(労働者)と自らの生活圏において「共生」する、日本の「多民族社会」の成熟に努力するという国民的コンセンサスが成立しないとすれば、単に労働力補充を目的とした移民労働者の受け入れ案は再考したほうが良いと考えます。

プロフィール
安井裕司
安井裕司
エジンバラ大学社会学部、バーミンガム大学国際政治学部博士課程で学ぶ。博士(国際政治学)。ルーマニア・アカデミー研究生、国連大学国際紛争研究所(北アイルランド)夏期講習クラスコーディネーターを経て早稲田大学エクステンションセンター講師。スイス在住。
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